2016/07/23 06:53

日本はオオカミは絶滅させてしまいましたが、野生動物が身近に見られる国です。

オオカミが果たしていた役割は、弱い個体(獲物)を淘汰間引きすること、獲物が常に警戒心を持って行動することです。

明治期の北海道は、オオカミが絶滅する前に、鹿を乱獲と大雪で絶滅寸前に追い込みました。獲物を失ったオオカミは家畜を襲い始め、

悪者にされて絶滅しました。

その後、鹿の保護政策が長く続き、国立公園などの保護区を沢山作りましたが、野生動物を保護区へ押し込めると、鹿のように集団で同じ場

所の餌を食う動物は、植生を破壊してしまいます。保護区を作ったおかげで、保護区の植生破壊を間接的に助長したわけです。

そして、今度は鹿を害獣だという人間は実に身勝手だと思います。

オオカミが絶滅したから 鹿が増えたから 被害が増えた だから殺すという主張は農業被害には当てはまっても、自然植生被害には、この

固定的な保護区のあり方が関わっている限り、当てはまりません。オオカミがいて保護区もない時代、鹿はオオカミに追いまわされて1か所で

のん気に植生破壊なんてしていなかったと思います。当時現在と同じくらいの鹿はいたと思います。全体の数は同じでも、密度が偏り、固定

化すれば、いくらでも被害に大きな違いが出ます。

話変わり、最近の事情

今年に入り、東北地方におけるクマによる人身事故が度々報道されましたが、

数の増減だけでなく、生活圏の距離の問題、警戒心の問題が出ています。

以前は、熊の行動、山の実りの豊凶との関連性の話題が多かったですが、都会に進出するクマ、サル、イノシシやアライグマなどの外来種

が多く、人と動物の行動圏が重複し、距離が相当縮まりました。

ハンターも減少し、里山の手入れも過疎化で放置されたり耕作放棄地が増えたりしたことが原因で、餌付けをしているわけではなくても、

ゴミをあさったり、果樹に上ったり、お墓の御供え物を失敬したり、動物側の採餌行動も警戒心も世代を経るほど変化しています。

サルやクマですと、モンキードッグやベアードッグなどによる追い払いも行われておりますが、このような警戒心を高めることは重要で

す。

カモシカは、なわばりを持つ動物なので比較的問題は小さいと思います(カモシカはウシの仲間です)。

シカの場合は、農作物被害や衝突事故、林業被害、高山帯に進出したり樹皮をかじるなど被害が多様ですが、1産1子なので、母集団が小

さい場合は大きな問題ではないです。問題は、母集団が野放しで大きい場合と密度の偏りです。

イノシシは、農作物被害や都市近郊への進出が顕著で、子を複数産むので、増加スピードが速く厄介です。

北海道は、カモシカもサルもイノシシもいないので、本州の自治体に比べたら労力的にマシだと思います。

東北地方の住宅地から100mの林に、調査区があります。昼間みると何となくそうなのかなあ?~という程度のけもの道です。

この住宅地で感じた変化は、イノシシの分布北限に近いので、最近5年くらいイノシシの痕跡が顕著なこと、マダニがやや目立つように

なったことです。近くの農家はそれ以上に変化を感じているかもしれませんが、そのほかクマの目撃、交通事故の危険、人身事故のリスク

の増大です。今までの思い込みで犬の散歩やウォーキング、山菜とりやきのことりをしていると危険になってきたということです。

その調査区この数か月でも、イノシシ クマ カモシカは撮影されましたし、周辺にはサルやシカもおります。

これが奥山ならさておき、住宅地から100m しかも日中となると住民への周知が必要になります。共存の仕方が問われています。