2016/10/04 23:32

私は、エゾシカの調査研究を始めた時に、作物の研究をしている研究室におりました。
その研究室の研究対象は、北海道の農業の主力であるムギ、じゃがいも、マメ、牧草、そしてこのビートです。
北海道以外の方には馴染みがない作物ですが、グラニュー糖の原料になります。
南はさとうきび、北はビートということになります。別名サトウダイコン ずんぐりとしたダイコンのような作物です。根部から糖を精製します。ロシアではボルシチの中にも入ってます。
さらに別名 甜菜(てんさい)とも言います。
実は、この植物は天才なのです。何が凄いかというと、葉に塩分(ナトリウム)を保持しています。
つまり、大袈裟に言えば 「上が塩 下が糖」 、普通植物はナトリウムを必要としません。むしろ害になります。
作物の研究をしていたら、天才だなで終わるのですが、私はエゾシカの被害や食性の研究をしていたので、すぐになるほどなと思いました。
エゾシカは、ビートを食うので厄介者の害獣とされてますが、現場に行くとビートが好きだからと言われている割に、食べ方は雑ですし、
葉もつまみぐいだし、被害額ほど実際被害量はないと思いました。被害額というのは、食べられた量ではなく、被害感情の数値化にすぎません。算出数式を見ればわかります。
ちなみに牛にも与えますが、根の搾りかすで、生葉を与えることは基本的にないです。葉にはシュウ酸が多く含まれています。
しかし、エゾシカが少なからず食べているのは事実です。葉も根も食べてます。根は糖分が多いのでじゃがいものデンプンと同じで、もちろん好みますが、そればかり大量に食べるとルーメンに不調をきたします。
その最大の理由は塩分でしょう。草食動物は塩分が必要 なのに植物は塩分不要。それを埋め合わせてくれる天才こそ甜菜ビートです。

エゾシカがなぜ十勝や網走の畑作地帯の内陸部まで分布しているのか?ビートが塩分供給源だからでしょう。5月に塩分が欲しい時期にタイミングよく植えてくれる作物がビートです。
農業被害と塩分は密接な関係があります。詳細は3本目で。