2016/10/06 08:27

日本は、火の国です。

時に災害をもたらしますが、各地に温泉が湧き、観光という恩恵もあります。

北海道にはいくつか活火山がありますが、雌阿寒岳、有珠山は特に要警戒の火山です。

また常時、水蒸気が立ち上っているような登別の地獄谷や屈斜路湖畔の硫黄山、さらに温泉が川に注いでいる知床カムイワッカなどがあります。

海外に目を向ければ、太平洋沿岸は火山だらけですが、カムチャッカ半島やイエローストーン国立公園など、野生動物の生息地とも重なり合っています。特に内陸部のイエローストーンは、塩という観点からみて温泉があるのとないのでは雲泥の違いだと思います。

特に積雪地帯では、冬でも地熱で雪がとけますから野生動物にとっては、長野県の地獄谷のサルほどではないにしても快適なことは間違いないでしょう。しかし、地熱により雪がとけて餌が沢山得られるかといえばそんなことはないと思います。

大体そういう場所に冬でも餌が豊富にあることは稀ですし、あっても奪い合いですぐ無くなるでしょう。

私のフィールドの阿寒湖一帯は、エゾシカが好んで越冬していた場所で四方八方からシカが冬になると集まる場所です

積雪は周辺よりかなり多いのですが、保護区があること、天然林(針葉樹と広葉樹が混ざった森林)があること(落葉性の針葉樹カラマツ人工林では越冬出来ません 危険&積雪から逃れられません)、主食であるササがあること、地形的に平坦ではなく傾斜や凹凸があること(傾斜があれば多雪地帯でも積雪による餌が掘りにくいマイナス面を相殺できます)、小川が沢山あること(湧水が多く冬も凍らないので移動に便利)

そして温泉なのですが、雌阿寒岳の麓には人為的に放された熱帯魚が野生化して問題になったところや、冬でもコオロギの仲間が鳴いているようなところもいくつかあります。

1本目の論文で河川水のナトリウム濃度を示しましたが、鹿が集まる場所でナトリウムが高い場所があり、そういうところでは鉱塩は見向きもされませんでした。

真冬の積雪期においてはほとんど鹿はナトリウムを必要としません。

必要とするのはエゾシカであれば3月頃からでしょう。その理由は3本目に書いてあります。

阿寒湖からシカが子育てのために各地へ分散するのは根雪が消えるころからですが、その時点で1回ナトリウムの体内チャージをする必要があります。その時こそ、道路脇に行くか、温泉に行くかということです。越冬地にナトリウム源が無い場合は、海沿いへ向かうか(ハンターはこのような行動について語ることがあります)、どこかへ寄り道をするか、子育て場所で補給するか、かなり切迫された状況に置かれることになると思います。私がメスジカなら相当機嫌が悪い状態に陥ると思います。特に雪どけが遅い年は、自分自身が死ぬかもしれない、生き延びても子ジカが流産するかもしれない、出産が遅れるかもしれないという3重苦に置かれており、特にナトリウムという厄介で必要なものが鍵を握っていると言っても過言ではないでしょう。

ですから内陸部で越冬するシカにとっては、火山&温泉地は非常に都合の良い場所ということになります。

冬の間暖かいという単純なメリットだけではないということです。

2021年1月24日のダーウィンが来た NHKにて

群馬県の山中の森の泉に集まるアオバトやシカの番組が放映されました

わずか1m程度の水たまりのようですが、温泉の染み出しによるもので主成分はナトリウムのようです

群馬は内陸部なので貴重な泉でしょう

アオバトも夏にカリウムが多い果実などを多く食べると、体内にカリウムが多くなりナトリウム補給が必要になるほか、体の酸性化を中性に戻したり、種に含まれる毒素が蓄積すると解毒したりする必要があります。

アオバトが多数集まると狩りの効率が上がり それを猛禽類クマタカが狙い、その死体の残滓を小型哺乳類が食べにくる。アオバトが排泄した果実の種子をネズミが食べに来たり、ヒトから見ればただの水たまりにしか見えなくても、野生動物にとっては食物連鎖の縮図のような場所です。

非常にいい番組でした。

群馬の森になぜか動物たちに大人気の「秘湯」があるという。見た目は小さな水たまりだが、森の珍鳥・アオバトが200羽も水を飲みに大集結。テンやシカ、ツキノワグマなどの動物たちも次々と姿を見せる。ここに、動物カメラマンの平野伸明さんが長期密着。


https://www.nhk.jp/p/darwin/ts/8M52YNKXZ4/episode/te/Q7MWK5Q6XJ/



ダーウィンが来た!「動物たちが大集合 密着!謎の水たまり」