NPO法人北海道自然資源活用機構 は、現在準備中です。

2017/01/08 12:07

これまでに忌避材や誘引材の調査研究や開発、使用技術について報告してきましたが、

以前は農作物被害や侵入防止のための忌避材が、近年は鹿の密度調整のための誘引捕獲に使用する誘引材に関する報告が増えています。

忌避材は、音や光、臭いなどにより警戒心を増大させるものですが、コスト、効果の持続性、安全性、その他条件(季節 設置環境)について様々な角度からみると、金属柵や電気柵よりも、持続的効果が低いものが多く、散布の労働コストや原料コストを考えると、実用性に疑問符がつく場合が多いです。

一方誘引材については、鉱塩についてとりあげてきましたが、誘引材について触れる前に、日本では鹿と塩(ナトリウム)のかかわりを軽視しすぎていることに疑問を感じます。そして、誘引材について議論する場合も、コスト、効果の持続性、安全性、その他条件(季節 設置環境)について当然検証されるべきです。忌避材の場合の安全性とは、薬剤などの毒性や電気柵の安全性などですが、誘引材については、例えば甘いものやトウモロコシで熊を誘引してしまい、熊を駆除せざるを得ない状況にしてしまったり、作業者が危険な状況に置かれるというものです。

また、すぐに食べられて、もしくは雨にあたると腐敗して、その都度交換や補充が必要であれば原料と労働コストがかさみますし、その点を自動給餌器のようなもので改善させる場合もありますが、それ以前に餌を与えて誘引するということは、空腹状態の鹿を誘引するのか、その餌が相対的に嗜好性が高いので誘引出来るのかを提示しなければなりません。空腹状態というのは、餌環境の悪さに起因しますが、多くは冬や早春期であり、積雪量の影響を受けたりすることが多いです。積雪が多いと空腹になり誘引出来ますと言っても、結局その分、給餌場周辺の除雪代コストがかさんだり、空腹でやせていて資源価値がほとんど無かったりということにもなります。

複数の餌を置いて、特によく食べたものは誘引効果があると定義している論文がありますが、それは単に与えた餌について相対的な嗜好性のテストをしているだけに過ぎず、1番嗜好性が高かったもの単体を用いて、どういう条件下で広範囲の鹿が集まって来たというような議論を展開しなければ実用的なものになりません。大抵は嗜好性が高いといっても、栄養的にも嗜好性も僅差であることも多く、周りの餌植物の種の多様性や資源量にも大きく左右されます。つまり汎用性がどうなのかということです。

ちなみに鉱塩というのは、海岸沿いや一部条件下、真冬はほとんど使えませんが、嗜好性が優れているのではなく、空腹を満たすものでもなく、生理的な要求を満たすものです。そして生息数次第では多少の補充は必要でも、1年に1度の設置で十分で、多少の雨に当たっても大きな問題にはならず(必要に応じて屋根があれば問題なく、土壌に浸透しても誘引可能)、腐ることもなく、持ち運びも保管も便利で最初から成形されているので二次加工の必要もなく、コストは牧草や配合飼料などを給餌誘引する場合とは雲泥の差で、1か所1個1500円程度~です。クマが周囲にいる場所で4,5年間複数の試験をしましたが、クマが鉱塩に誘引された記録は1度もないです。