2017/05/13 00:15

鳥獣対策に関する補助金の不正ニュースが最近多く流れてます


ちなみにうちのNPO法人は補助金は過去に1円すらも受けておりません

何故こういうことが起きるのでしょう

まず日本の鳥獣行政は、素人に多く依存しているということです
つまり相当低レベルなのです
鳥獣行政とは、主に農水省系と環境省系の2つであり、
前者は農林業被害対策の延長にあります
後者は国立公園管理の延長にあります
また、前者は有害駆除、後者は狩猟と関係します

担い手は、捕獲の資格を取得したハンターですが、駆除は市町村や農協からの依頼、狩猟はハンターの趣味です
狩猟は、登録料を支払い、ルールに基づいて行うもので、その登録料は鳥獣行政に活用されてます
ハンターが減少すればこの税収のような収入も減るわけです
ちなみにハンターというのは、ハンティングだけで生計を立てている人は少なく、ほとんどが兼業や趣味です

駆除は、個人に依頼するというよりも、猟友会のような団体にまず依頼して、その会員が実行することが殆どです
駆除は昔は期間が6か月くらいでしたが、年中許可が下り(駆除許可期間と狩猟期間が重複するようになった)、捕獲の上限制限も曖昧になってきています
被害を減らす、被害がなければやめるというのが普通の考えだと思いますが、被害の有無に限らず害獣を減らすことが目的になっています
とはいえ、予算がなければ依頼出来ませんので、市町村や農協が支出出来る予算は限界があります

さらに前述の狩猟は1シーズンの狩猟許可に対してルールの範囲内の捕獲数なら1頭でも100頭でも一定額に対し、駆除は1頭いくら払うという契約がほとんど
です 駆除捕獲数が増えればそれだけ予算が必要です
つまり、日本全体の鳥獣行政は、収支バランスが最初から大赤字になる構造です

そこに近年2つの変化が起きました
この不足する市町村(複数の市町村の協議会向けの場合も)単位の鳥獣駆除予算に、農水省から補助金が出るようになったわけです(既に4年出てますが、それ以前ももう少し額の低い補助金はありました)
その結果それまでは狩猟による捕獲数が多かったのに、駆除による捕獲数が狩猟のそれを上回るようになりました(つまりさらに鳥獣行政の収支バランスは悪化)
以前は狩猟が6割だったのが、現在は駆除が7割
分かりやすい変化でしょう
駆除許可期間と狩猟期間が重複するようになったと書きましたが、片や税金を納めて狩猟しているハンターと片や1頭ずつ駆除の報償費を受け取るハンターが同一期間同一場所に同居している(それを許可している)のは、税の徴収や使い方からみても非常に問題なのです。
http://www.pref.hokkaido.lg.jp/ks/est/hokakusuunosuii_h27kakuteiti.pdf
当然これは国民の税金ですから、監督も厳しくなります
ですが実行しているハンターには金欲の塊みたいな者もいるのです。つまり被害対策なんてどうでも良く補助金をいかに沢山もらうかが目的にすり替わるということです。
農水省→都道府県→市町村・協議会→個人ハンターという流れですが、
ここで国や都道府県は、不正が起きないように、本当に捕獲したのか不正がないように証拠写真と証拠品耳や尾の提出を義務付けたのです

もう一つの変化として、環境省がハンターの減少対策として、法人などにも捕獲の担い手になってもらうようにしたということです
つまり、ここで長年駆除を担ってきた猟友会以外に、民間企業や新規に設立したNPO法人などが、競争入札で駆除事業を市町村から受けるようになったということです
ちなみに、これ自体は税金の節約になるので競争原理が働くのはいいですが、市町村を越境して捕獲を担うようになれば、お金の取り合いを巡る軋轢は増えると考えていいです
実際、この補助金が出てから、捕獲数は増えた、しかし、不正も増えた、人間関係が悪化したのも事実です

しかも、さらに捕獲を担う目的の補助金ばかり増やし、その捕獲個体をきちんと無駄にしないように活用する補助金や整備に関して、国も、都道府県も、市町村も、後回しにするために残滓放置や有効活用が進まないという状況が生まれます
つまり、活用しようがゴミにしようが義務はないので、殺してお金をもらうことが目的になるのです
同じ行政が条例で活用も推進するとしておきながら、活用しなくても構わない駆除の補助金をばら撒いて、活用がなかなか進みませんと言っているのは当たり前の話でしょう
これなら被害も減らない方が都合がいいですよね この先もどんどん税金使いましょうということになる

不正の話になりますが、そもそも元の財源は国からのものなのに、駆除の権限は市町村まで下してしまっていることで、チェック機能の甘さが出てきます
そして、市町村の担当者は、お金を払う側なのに、いつの間にかハンターと立場が逆転していたり(例えば写真撮り忘れたとか証拠品がないとかでも押し切られてしまう)、偽写真や偽の証拠品を黙認してしまう(例えば、角度を変えて撮影したものの使い回しや別の場所や時季に集めた耳や尾の使い回し)
まして入札の操作やキックバックなんていうのは論外で逮捕は当たり前です
こうなると捕獲数も曖昧、害獣も減らない方がいいですね

何故日本の鳥獣行政が低レベルなのか?
ここまで読めば呆れるレベルでお判りでしょう

被害対策→個体数管理→おまけの残滓活用の流れで行われている日本の鳥獣行政を永遠に続ける限り税金を垂れ流すことは間違いないのです
そしていつまでも被害が減らない、ハンターが足りない、ゴミが多い、予算が足りない 目標が達成できないと騒ぎ続けるのです
こういうことをしていると科学的な管理を行うなんていうのも机上の空論になるのです 
そもそも捕獲数も被害額も所詮自己申告であり、信用ならなくなってきます
この繰り返しでは、野生動物が振り回され無駄死して可哀そうとしか言いようがありません
共生を目指すと掲げておきながら、いかに鹿が害獣かという鹿を殺す大義名分を与える被害調査データばかり集めたり、減らすため、被害状況を把握するための予算措置を要望し、予算が無ければ先に進まないという。一方で、ハンターが減るので急がなければいけない、規制緩和が必要だと言う。鹿をいかに減らすか捕獲するかという議論は盛んにされておりますが、鹿は沢山捕獲したものの被害が減っていないとか、鹿が減って、どういうメリットがあったのか広域かつ具体的なものはあまりないのです。北海道のエゾシカなんてそろそろ200万頭も延べ捕獲したことになります。200万頭の大半ゴミにしましたというお粗末さです。実にもったいないし可哀そうです。

こういう主張は聞き飽きました。

むしろ完璧な有効活用システムを構築する(コスト 効率 持続性 廃棄率を0に近づける)ことを第一目的にするとしましょう
最終的には持続的な個体数管理が必要となり、その結果被害もコントロール出来るという真逆の手順と流れになり、むしろ税金も沢山使わず、経済効果により資源が税収となり、ハンター不足も自ずと補完出来て、無駄死させることなく、害獣ではなく共生や感謝の対象になるのです
スピードもこちらの方が民間主導なので相当速いです。
日本の研究者が上記のような管理の必要性を、被害対策の延長で主張してからそろそろ約30年経過します。しかし、昨今急速に全国展開している有効活用はここ5-10年くらいの間で急拡大してきました。
特にペット関連は、食肉ジビエ以上に動きが活発です。行政は、ジビエが主体でペットフードはおまけだと思っているかもしれませんが、拡大スピードは明らかにペット市場の方が速いです。そもそも、ただ殺すだけで得られる補助金をばら撒いたら、食肉として利用出来ない捕獲個体で溢れるのは当たり前です。需要の少なさではなく、供給過程の問題です。ペット市場が動き出すとジビエ食肉市場も動き出します。もちろんその逆もです。解体処理場の経営が安定するからです。
これによって、どれくらいの国民が鹿の価値を再認識したかが重要です。一方で、捕獲意欲は有効活用の流れが徐々に構築される(捕獲後の流れが出来る)と高まるということも実感としてあるのではないでしょうか。

このような場合、有効活用もろくにしないただの駆除には補助金は出さないか減らすことにシフトさせることになります
補助金を最初に入れた見返りを国も地方もやがて期待できるのは明らかに後者でしょう
補助金は、税金ですからだらだらと長期間出すものではなく、成果や効果が問われるものであり、出すタイミングや出し方、投入先を間違えてはいけないものです。

被害対策は、当然必要です。しかし、被害が減るまで鹿が減るまで、有効活用は後回しという考えではなく、まず被害対策およびそのための捕獲6:有効活用4ぐらいの比重にすべきです。これまでだと9:1くらいでしょう。
9:1だと社会的に損失ばかり膨らみ、時間ばかり浪費して、無駄死の山となり、残るものは何もないなんてことになるのです。
欧米の真似して個体数管理を導入するのであれば、欧米で行われている有効活用もセットで真似すべきです。