2017/06/19 09:15

知床の森に最初に行ったのは1991年の5月です

そこからおよそ15年くらいの間に鹿の増加と樹皮食いが顕著になりました
最近10年間は顕著な樹皮食いは見られなくなりつつあります。
雪が多いと樹皮食いは多くなる傾向にありますが、鹿を捕獲で減らせば樹皮食いが発生しても被害規模は抑制出来ます。
これも理由の一つですが、ほかには選択性が高い樹種がかなり食われ尽くしたということもあります。大きな木の樹皮が剥がされるか否かで
被害の目立ちやすさも随分異なります。
ササ食い 枝食い 落ち葉食い 樹皮食いのうち、樹皮は選択性に樹種間でかなり差異があり、特に太い大径木の場合差異は顕著です。
細い若木の樹皮や枝食いは、主に森林の天然更新への影響、大きな木の樹皮食いとそれに伴う枯死は、大きなギャップを形成すると同時に
種子や落葉供給量の減少、その他の動植物への影響が考えられます。

例えば、古い樹皮食い痕では
針葉樹のイチイ(オンコ)は知床においては、選択性の順位では1,2番目に高い樹種です。
この木は外周全体(栄養の通り道は樹皮のすぐ内側にある 円周全て剥がされると太い木でも枯れる)を剥がされていないためまだ生きています。大きなイチイであれば、枯れれば少なからずギャップ形成します。



こちらはオヒョウニレの木 下から2/3は樹皮食い 1/3は枯死後に樹皮の剥がれ落ち
絡み付いている植物はツタウルシ かぶれます
今の時期は、マダニ、ウルシ、ブヨ、蚊、ハチなどの総攻撃状態です
ヒグマもたまに出ますが、それ以上に厄介なのは吸血害虫です。
ピンクの番号は、調査用識別タグ いつどの木が倒れるかの確認など。

阿寒国立公園でも、知床半島でも、大径木選択性No1の樹種です。これが枯れるとギャップを形成し、倒れるときに周りの木々も
倒れ、より大きなギャップが出来ます。

倒れたあと、タモギタケという食用きのこが出てきます




上を見上げると 樹冠も枯れて葉がなく光が差し込みやすくなります
これをギャップといいます
森林内部で鹿の樹皮食い以外にギャップが出来る場合は、針葉樹の倒木
特にトドマツの倒木が多いです。トドマツは常緑針葉樹なのでこれが倒れると林床(地表)の光環境は大きく変化します
例えば強風、雪、寿命、時にクマゲラ(日本最大級のキツツキ)


トドマツは倒木しやすい樹種です
同じ針葉樹のイチイと比較して、選択性は高いとは言えません。中大径木は特にそうです(部分的に食べても枯らしてしまうほどではない)。


生きているトドマツのクマゲラ採餌痕 倒す場合もあります

アリ狙いです


右はハリギリという数年前に生じた倒木の樹胴 もう少し上の方で折れればシマフクロウの営巣に使われることもあると思います
広葉樹大径木樹種は、ほかにカツラ、ミズナラ、オオバボダイジュ、イタヤカエデ、ホオノキ、ヤチダモなどが周囲にありますが、大径木
の選択順位としては、どれも低いです。


覗くとやはりアリがいました
別の採餌場所
クマゲラの糞 蟻だらけです
囲いの黒い姿がクマゲラです 携帯撮影で小さいです


光が届くようになり、ギャップ下で成長はじめる幼樹
でも競争に勝ち抜くのは大変です 最大のライバルはササです 
ここはササを鹿が食い尽くしたので、鹿が完全なマイナス要因だけの存在と考えるのは間違いです
でも途中で、鹿や熊に食べられてしまう場合も多い やっぱりマイナス(笑)
要するに密度管理の問題なのです。鹿を0にする必要はないですが、どこまで許容出来るかの見極めが難しいのです。



倒木更新というのもあります