2018/02/21 05:30

ペットフードに馬肉も人気ですが、馬肉も鹿肉も赤身肉で似ているように思えます。

何か違いがあるのでしょうか?
それは脂肪酸の組成です。
例えば馬油クリーム、これは人の皮膚の組成に近くなじみやすくて浸透性も高いと言われています。
鹿油を同じように使おうとしても使えません。
「鹿肉には多価不飽和脂肪酸が多く含まれ」というような商品PRをしているところがあります。
あくまで豚鶏牛と比較すればそうかもしれませんが、脂肪酸は、同一個体でも部位や季節によって組成が変化しますので、種間比較を論じる場合は、部位や季節を同じ条件で比較しないと正確とは言えません。
さらに馬や魚には到底敵いませんし、鹿の全脂質は、パルミチン酸やステアリン酸など飽和脂肪酸の割合が高い脂です。
もし、鹿の脂肪酸中の多価不飽和脂肪酸の割合が高かったら、脂肪の融点はもっと低くなります。
やや暖かい室温で、馬油と鹿油を置いておいたら、溶けているのは間違いなく馬油です。融点が低いリノール酸などが多く含まれるためです。ちなみに魚油などのDHAやEPAの融点は0℃以下です。
逆に、この馬肉の脂に多く含まれる多価不飽和脂肪酸は、人間の健康に寄与する反面、酸化しやすいというマイナス面があり、
新鮮さが重要で加熱や放置による脂肪の酸化は逆効果になります。
サプリメントのDHAやEPAがカプセルに入っているのは
酸化防止の役割もあります。

それぞれのオイル中のリノール酸濃度で比較した場合 馬を100とすれば 猪は50 鹿は5程度です。

リノレン酸 これが鹿に家畜(牛豚鶏)より多く含まれていると言われる酸化しやすい融点が0℃以下のω3多価不飽和脂肪酸ですが、オイル中のリノレン酸濃度で比較した場合 馬を100とすれば 猪は50 鹿は25程度です。リノール酸よりは、鹿も低くないですが、それでも敵いません。



参考まで
室温22℃くらいの時の内臓付近の脂肪から抽出したオイルの状態

小瓶 ヒグマ 熊油 トロトロです
手前 信州産ウマ 馬油 トロトロです 黄色いのはオレイン酸ほか
上 飛騨産イノシシ 猪油 固まってます 押すと柔らかい状態

画像にはないですが、ここにエゾシカ 鹿油があるとすれば 猪と見た目は同じ白い固形状態です
猪油とこの温度における違いは、鹿油の場合は押しても硬い状態ということです