2018/03/16 11:30




鹿のアバラの脂肪から精製した鹿チーズではなく、鹿オイル 鹿油です。

鹿の脂の特徴について、背ロース→低脂肪→脂肪酸組成→多価不飽和脂肪酸が多い→ω6/ω3の構成比が理想的という特性が挙げられています。
ロース付近の可食部のみを切り離して、その特性を挙げれば上記のようになると思います。
一方、鹿の体全体のうち可食部(ロースやもも、アバラなど)のうちアバラは、低脂肪部位ではないです。
季節的に脂肪が減少する越冬期後半や栄養状態が十分ではない個体では、アバラにも脂が少ないことはあります。
アバラの特徴は、脂肪割合は多く、脂肪酸組成のうち、多価不飽和脂肪酸は多くはない。ほとんどが飽和脂肪酸のパルミチン酸やステアリン酸で構成されていると思います。このあと分析してみます。
鹿という動物種の脂肪の全体的特徴を見た場合でも、低脂肪で飽和脂肪酸が多いため融点が高く、酸化しにくい脂肪ではないかと思います。少なくとも魚に似た脂肪(ω3多価不飽和脂肪酸)とは程遠いでしょう。魚油のように酸化しやすい脂肪だとすれば逆に融点が低いため室温20℃以上でこんなに固まることはないのです。固まってしまうから、そうではないという単純な理屈です。

それはさておき、この鹿油の塊はどんな用途があるのでしょう?
融点が高いので、ろうそく原料、せっけん原料には向いていると思います。
原料の融点が低めの馬油せっけんなどには、融点が高い蜜蝋やパーム油が配合されたりすることがありますが、融点が高いものと組み合わせて固化させていると思います。そうじゃないと固化してもお湯などに簡単に溶けてしまいすぐに消えてしまいます。

例えば、北海道純馬油本舗さんの馬油石鹸ー白カンバ石けんーの成分をみると、
〈全成分〉ヤシ油・シラカンバ樹液・馬油・パーム油・水酸化Na・シア脂・オリーブ油・(ラベンダー油・グレープフルーツ果皮油)とあります。

鹿油は、オリーブやパームなどの植物油よりも融点が高いので、少ない量の配合でも固化しやすいと思います。
逆に、鹿油主原料100%の石鹸を作っても、滑らかさや泡立ちなどに欠けます。なので逆に融点が低い油脂と組み合わせる方が良いです。どれくらいの比率で組み合わせるかは好みの問題もあります。

鹿油ー+++酸化安定性 長持ち 融点高い 低刺激 パーム油(融点高め)の代用可 オレイン酸リノール酸少ない
鹿油との組み合わせ(動物+植物)ー椿油 オリーブ油 菜種油などの高オレイン酸植物油、or 泡立ちココナッツ油
馬油ー融点低い やや酸化しやすい 高温加熱不向き 高リノール酸
イノシシ油ーやや酸化しやすい 融点やや低い オレイン酸多い リノール酸やや多い 人肌組成に近い 浸透 低刺激
動物油同士(動物+動物)ーイノシシ油+鹿油 混合〇

また手作り石鹸の素材として使う場合、使用する方の肌の状態や肌質に合わせて調合すると思いますので、鹿油が肌に合えば、比率を上げることも考えられます。

石鹸を売る予定は今のところございませんが、これらの原料になり得る無添加の鹿脂、鹿油およびイノシシ脂であれば、その使途はお客様の自由(ただし非食用)ですので販売は可能です(全成分組成試験後)。自家消費の手作り石鹸に用いる場合は、全て自己責任の範囲で行っていただくことになります。⇒お問い合わせよりご連絡下さい。

パーム油よりは2倍程度割高になると思いますが、熱帯雨林を破壊してプランテーションで生産されるパーム油を我々の生活の中で大量消費して、間接的にはインドネシアやマレーシアの熱帯雨林の生態系破壊やゾウ、トラ、サイ、オランウータンをはじめとする野生動物の減少にも拍車をかけていることを鑑みれば、鹿油をパーム油の代用に使うというのも、手作り石鹸ならではの個々に出来る環境保全の取り組みとも言えます。これが大量に鹿油が必要ということになれば、今度は鹿の乱獲になってしまうので、あくまでバランスの問題です。

参照

RSPO「持続可能なパーム油のための円卓会議」とは

https://www.wwf.or.jp/activities/resource/cat1305/rsportrs/

パーム油 私たちの暮らしと熱帯林の破壊をつなぐもの

https://www.wwf.or.jp/activities/2011/11/1027822.html