NPO法人北海道自然資源活用機構 は、現在準備中です。
2018/07/02 23:15
樹木の更新にとって、ササの存在や鹿の存在は妨げになる場合が多いですが、そのササや鹿が排除された森はどうなるか?
知床半島の実験林の現在の様子です。
柵で4haの国有林の森が囲われています。北海道森林管理局が囲ったのは2007年秋なので、2007年冬から2017年冬まで約10年間鹿の密度が0の状態を維持しています。
2007年秋の時点で、鹿による樹皮食いなど(広葉樹小径木全般、針葉樹イチイの90%くらい、広葉樹オヒョウニレの中大径木の枯死、クマイザサ・チシマザサの消失もしくは衰退)が生じていた森です。柵内の回復過程と柵外(鹿の採食圧が継続)の違いを比較している場所です。
外側から撮影
内側
数千本を測定、同定してあります
イチイ(オンコ)の樹皮食い 枯死木
抗がん剤成分です
地面にはツル性のツタウルシ
すごくかぶれます 地獄絨毯です
オヒョウニレも樹皮食い枯死 多くは既に倒れています
こういう明るい空間はギャップと呼ばれます
母樹が消えても幼樹のオヒョウはかなり目立つようになりました
明るい場所には大型高茎草本が生えています。例えばヨブスマソウ。
ちょっと暗い場所にはオオウバユリが勢力拡大して、柵の外にも。
内側から
トドマツなどの針葉樹更新も
ただトドマツはよく倒れます
柵を破壊することもあります
大きな広葉樹が倒れると、周りの木も巻き添えに
根もひっくり返ります
巨大なギャップ形成
ひっくり返った根株に種子が落ちれば、明るいですし、ライバルよりも最初から高い位置でスタート出来ますので、非常に都合がいいです。ただし鹿がいない場合という条件付きですが。
これは柵外
針葉樹が密集すると暗いので草本や稚樹幼樹は少ないです。
明るくなった場所をうまく利用出来る樹種はホオノキです。どんどん伸びます。
まだ暗い所では、じっくりチャンスを待ちます。
枝を横に広げて僅かな光を受け止める。光合成効率を上げる。
枝の形、葉の形、葉の厚みは様々、樹木の適応力は凄いです。
多様性を生み出す力の一つは撹乱です。海洋生態系も、風、海流、地形、対流、栄養塩、台風、海底火山など様々な撹乱によって作られています。鹿は害獣という見方は、撹乱という観点から見れば、程度の問題はあるにしても、必ずしも当てはまりません。