2018/08/09 12:51

現在、アフリカではサイやゾウの密猟が多く、急速に生息数を減らしています。

リーマンショック以降の10年は特に急速に悪化しているのではないかと思います。アジアの景気と密猟品に対する需要がリンクするためです。
密猟者の目的は、サイの角と象牙の輸出です。特にアジア方面への密輸が多いとされています。
ワシントン条約など国際取引が規制されていても、アフリカ国内の売買までは取り締まれないといった問題もあるようです。
もちろんアフリカにおける密猟の監視や象牙などの市場に対する封じ込めはアジアでも行われていますが、抜け道も沢山あると思います。
サイの角は、最近は生け捕りして予め殺されないよう角だけをカットして、また放すというような角のない野生のサイ増加作戦みたいな苦肉の策がとられています。

レンジャーを増員しても密猟者が減らないということは、リスクを冒してでも密猟する動機があるのです。
それは貧困と需給のひっ迫によるサイの角や象牙価格の高騰です。
後者の象牙価格の高騰は、需要が伸びたというよりも供給がSTOPしたせいではないかと思います。つまり合法的な輸出や輸入規模すらも縮小してしまい、さらに密猟者摘発時に押収した象牙を見せしめのために燃やしていました。
個人的には、この密猟者から押収した象牙は燃やさず保管しておくべきだったと思います。仮にこれを合法とは言えないにせよ、正式な手続きに基づいてアジア市場に供給した場合、例えば日本の象牙を使いたい業者はこれを使いますから、どこからか密猟象牙の取引を持ちかけられても断ると思いますし、需給のバランスが緩和してアジアの市場価格は当然下がるわけです。
密猟者も、お金目的で密猟しているわけですから、命と引き換えにやる密猟なのかどうかは価格次第で変わっていきます。
マグロやウナギも高値で取引されるようになれば、闇取引が増えるようになります。単純な漁獲規制では防ぎ切れないでしょう。
そうなる前に手を打つ必要がありますが、トラやサイはもともと生息数が少なく供給による市場価格コントロールが出来る動物ではありませんが、20年くらい前のゾウであれば、生息数を減らす前に対応出来たはずです。

先日も以下のようなニュースが流れていました。時事通信社2018.8.1
「国際NGO世界自然保護基金(WWF)は7月31日、過去1年間で、アジアやアフリカ中部で野生動物保護官100人以上が任務中に死亡したと発表した。半数近くが密猟者に殺害されたという。」

今みたいにいたちごっこを繰り返している一つの理由は、市場価格のコントロールに失敗したことだと思います。
見せしめで燃やしたところで、その死んだゾウが無駄死するだけで、さらにまだ生きているゾウがまた狙われるくらいなら、燃やさず市場に出した方が残されたゾウの保護という成果は得られたと思います。
密猟者に警告を出したところで、価格が上がれば命を懸けてでも密猟をする背景がアフリカにはあるということです。
それが日々の暮らしもままならない貧困です。

密猟者から没収した象牙を国が正式に販売した販売益を丸ごと貧困対策に充当すれば、今のような状況とは少し違ったかもしれません。
そんな密猟者の肩代わりみたいなこと許せんという意見もあると思いますが、ゾウを結果的に保護出来ていないのですから、やはり理屈をこねても失敗は失敗なのです。密猟者を沢山捕まえても、その予備軍は貧困がある限り消えません。

先日wowowで放映されている

ノンフィクションW MISIA Return to Nairobi ~10年の奇跡~

というドキュメンタリーを拝見しました。
ケニアナイロビのスラム街の子供たちに教育の場を提供しているマゴソスクールの子供たちと歌手MISIAとの交流で、10年前に出会った子どもがその後どうなったかという紹介もされています。親もいない食べるものもない。でも何故かみんな笑顔で仲良し。
驚いたのは、日本の大学に留学している子がいるということです。
「お金は盗まれることはあるけど、教育を通じて得た知識や経験は盗まれることはない」という言葉が印象的でした。
遠まわしに解釈すれば、アフリカの貧困の背景は、先進国による労働や資源の搾取でもあります。
太陽光発電の仕事をしている子もいました。
音楽を通じた交流、教育の重要性を訴えています。
この中にも野生動物の話がちらっと出てきました。
音楽を通じた交流の映像で終わってしまう場合も普通ならあると思いますが、自然環境が破壊されたらそこの人々の暮らしも破壊されてしまうし、教育という機会を失えば、お金目的の密猟という選択肢をとらざるを得なくなるかもしれないということです。教育を受けて、将来リーダーとなり、野生動物を保全する仕組みを作ってくれるかもしれない。いろんな可能性が広がります。

アフリカの野生動物保護、環境保全を考える上で、密猟監視も大事ですが、遠回りのように見えても、1番重要なのは教育の機会を得ること、貧困が解決していくことだと思います。

マゴソスクール 寄付した頃にスラム街で大事件があったようですが・・・
http://magoso.jp/magoso

先日鹿角の売り上げの一部寄付しました。シカの命と引き換えに遠まわしでもゾウが保護出来るとまでは言いませんが、実際象牙加工業者は一部鹿角で代用しているところもあります。

今後とも可能な限り支援したいと思いました。