2019/01/10 06:19

北海道では、開拓初期のエゾオオカミがまだ生息していた頃に、シカが先に乱獲や大雪で激減して、

獲物であるシカがほとんどいなくなったエゾオオカミが家畜を襲うようになり、害獣駆除で絶滅した。
そのあと絶滅寸前だったエゾシカを保護し続けて、天敵のエゾオオカミも不在で生息数を増やし、さらに牧草地などの餌場も増えて、
栄養状態も良くなり、保護区を中心に母集団が大きくなり、放置していたら、数十万頭の個体数、数十億円の農林業被害、交通事故、保護区における植生に対する強い採食圧がかかりましたという流れです。

有効活用は実際には今始まったわけでは無く、アイヌによる利用はもちろんのこと、明治時代に缶詰工場はありましたし、激減する前は利用を推奨しておりました。
何故破綻したかといえば、大雪もさることながら、きちんとした資源管理システムがなかったことが挙げられます。
現在のエゾシカやニホンジカを見ても、被害対策の個体数管理なので、資源管理システムが備わっているとは思えません。
例えば、雪による増減、乱獲、地域個体群の増減のバラツキ、駆除に関する補助金バラマキ、低い利用率と高い廃棄率、密猟、痩せて利用価値がほとんどない時期(2月後半~3月)の狩猟許可などです。

で、話は逸れましたが、
犬猫ペットフードに鹿肉を与えるということは、言い換えると
シカを、犬猫が襲って食べるわけではないですが、人が仲介して、犬猫に与えているわけです。
オオカミが絶滅していても、犬が国内に800万頭くらい、猫は900万頭くらいいるわけです。
野生のオオカミが例えば800頭くらい日本に生存していたとしても、野生のシカの消費量は、現在の800万頭の犬うち鹿を与えている割合が1%の8万頭だとしても、後者の方が消費量としては恐らく多いでしょう。
つまり食物連鎖的には、日本では犬猫が絶滅したオオカミの代わりを担っています。

しかし、何が違うかといえば、
例えば、オオカミがシカを襲ったおこぼれは他の動物にも恩恵がある。→残滓放置をハンターがすれば同じようになりますが、残滓放置は違法なのと、鉛弾を使える地域は同時に有害な鉛をばら撒いている。北海道では猛禽類を中心に鉛中毒死が多発した。現在北海道では鉛弾は所持も使用も出来ません。
鉛弾で捕獲出来る本州以南の鹿肉内臓類は果たしてヘルシーかどうかは疑わしい。個人的には、イノシシも含めてどのように捕獲したか?鉛弾は使用したか?といった確認もせず利用する気にはならない。

オオカミは、シカの群れの中の弱い個体を淘汰するが、ハンターはどちらかといえば、オスジカなど健康な良い個体から淘汰しているので、この点は全く異なる。

日本のシカによる生態系被害(例えば、樹皮食い、希少植物の食害、植物や種の多様性低下など)のほとんどは環境省が指定する保護区や国立公園内で生じているが、それら保護区を設置する段階ではシカの生息数が少なかったので、将来的な悪影響を考慮していなかった。
また、このような場所では、シカは通年定住もしくは、季節的定住(例えば毎年夏利用、毎年冬利用)が採食圧を高める原因となっており、警戒心も低い。
オオカミがいる場合は、シカの分布や採食行動はオオカミの存在により固定化されにくくなり、採食圧も分散するため、不可逆的な生態系被害は生じにくい(同じ場所の連続的断続的な被害が生じにくい)と思われる。
つまりシカによる生態系被害は、間接的には日本の保護区制度に問題があります。そこにメスを入れずに、ただハンターの数を増やすとか駆除を強化するとかありきたりの対症療法ばかり主張しています。労やコストをかけている割には被害は減らない。これこそが税金の無駄な政策です。
ただ不特定ハンターを入れるわけにはいかないので、生体捕獲するにしても銃で捕獲するにしても、保護区内で捕獲をする場合は、年間捕獲数の上限を定め捕獲後の有効活用を前提として、捕獲1頭当たりいくら払うみたいな欧米型システムに移行した方が良いと思います(つまり税収)。今はどちらかといえば環境省が税金を使い被害緩和のために捕獲を外注依頼している。有効活用が盛んになると、上記のような手法を導入出来るようになる点が、被害対策のための個体数管理とは決定的に違います。

北海道では、近年一部地域のヒグマが、上記のオオカミ的な役割を多少担っている可能性はありますが、僅かでしょう。