2020/08/02 06:41

夏休みといえばクワガタ カブトムシ探しが子どもの定番ですが、

この虫を探すという行為は、子どもにとって結構重要かなと思います。
子どもなりにいろんな工夫や知恵を働かせたり、思い通りにいかなかったり・・・期待通りの時は大喜びだったり。
樹液に集まる虫に魅了されたり・・・しかしスズメバチも集まるので要注意です。

最近は、外国産が売られて逃がしたり(してはいけません!)と問題もありますが、やはり在来のミヤマクワガタやノコギリクワガタの
勇敢な姿には惹きつけられます。

カブトムシの角よりもクワガタの顎の方が鹿の角の形状に近いですが、どちらもオスの役割は似ています。
戦う時も似てますし、戦わず威嚇するのも似てますし。

ミヤマクワガタは地域個体群間(幼虫の栄養状態という見方も)、例えば北海道はエゾ型というような特徴があるようですが、ノコギリクワガタの場合は同一地域個体群のオスでも体サイズや顎サイズおよび形状にミヤマクワガタ以上の明瞭な差異があります。



なので、研究上面白いのはノコギリクワガタです。
どうやら、幼虫時期の餌次第らしいですが、興味深いのは小型の場合は飛翔能力 羽の発達を代わりに獲得するようです。
角や大あごを持つ甲虫は、同じ親から生まれた卵でも、幼虫期の栄養状態が良いと体の割に角や大あごが大ぶりになり、栄養が良くないと小型になる。
エピゲノムのスイッチ役「ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)」が、大あごの大きさを決定する遺伝子を制御していることがわかった。
 大あごに関係するHDACは2種類あり、一方の働きを弱めると大あごが小型化して羽が大型化、もう一方を弱めると逆になった。栄養が良く、体が大きいと闘争に勝てるよう武器を巨大化させ、逆に栄養が悪くて大きくなれないと武器の代わりに羽を発達させ移動能力を高めていると考えられるという。
闘争能力と飛翔移動能力がトレードオフの関係になり、川に残り小型のヤマメと海に下り大型回帰のサクラマスにちょっと似てます。
クワガタでもカブトムシでも、飛べないと困りますし、飛ぶにはエネルギーが必要です。大きければ体も重くなりますし、
大きくなり過ぎると鳥にもタヌキやキツネにも見つかりやすい。

樹液に集まる、そこでオスメスが出会い交尾する、メスはそのあと産卵場所を探すという一連の繁殖行動で、特に餌場=繁殖場になっており、そこで争いごとが絶えないわけです。樹液が出る木や傷口がある木は多くはなく、本州は里山のクヌギが有名ですが、北海道ではニレやナラ、ヤナギなど。ここでまた、鹿と関連が出て特にハルニレやオヒョウはエゾシカが冬期に樹皮を剥がしたため、道東地域や国立公園の河畔では広域的にかなり枯死した樹種です。

樹皮が剥がれやすい樹種なので傷があれば樹液が出やすいとも言えます。エゾシカが一部だけを剥がした場合は、むしろクワガタにも都合がいい餌場が供給されるかもしれませんが、全周剥皮ですと栄養の通路が遮断されて大きな木でも枯れてしまいます。

ミズナラは鹿の選択性が低いので中大径木の剥皮被害はほとんど無いですが、樹皮が厚く堅めなのでニレよりは外部に樹液は出にくいと思います。

エゾシカでは秋に繁殖期を迎え、特にメスが餌場として使う牧草地が繁殖場になり、大きなオスがメス子の群れをガードするハーレムが出来ます。ただこのハーレムは特定の場所をガードしているわけではないので、メスが移動すればオスも移動します。つまり牧草地や餌は沢山あり、樹液の餌場みたいに餌をめぐる競争や餌場の奪い合いが起きていないのでちょっと違います。大きなオスがハーレムを形成しても、メスは昼間森に戻れば家族単位でバラバラになりやすく、若いオスが周りに多いので隙も多く、長期間1頭の大きなオスが、他のオスを蹴散らしメスを完全にガードするのは消耗が激しく難しいです。そうなると角が小さい個体でも大きなオスが消耗するまで待つとかサケのように隙を見て繁殖に参加出来る機会が生じます。大きな角は非常に重いですし、個人的には角をそこまで大きくするメリットはあるのかな?と思います。メスが大きな角のオスしか受け入れないというのであれば別ですが、角が大きなオスしか受け入れないなんて選り好みしていると発情日が過ぎてしまい、メスも繁殖期を逃してしまいますので、相対的にハーレムを形成できるようなオスという妥協になるでしょう。

クワガタの顎の方が鹿の角よりも、大きいメリットはあるかもしれません。餌場が少なく、さらにカブトムシというライバルもおり、餌場のいい場所を占拠出来れば、そこにいればメスは必然的に集まるので(樹液酒場クワガタホストクラブみたいなものです)、移動しながら探し回る必要がありません。エネルギーの消耗は低いわけです。城でいうなら籠城ですね。
上記の研究で興味深い顎が小さい個体は飛翔能力、移動能力が高く、樹液を探す能力、ここの樹液は勝ち目がないなら他を探そうというような戦略も立てられるでしょう。騎馬隊みたいなものでしょう。あとは、行動時間が長いとか活動開始が早いとかずらすとか工夫があると思います。

ミヤマクワガタ 蝦夷型
アゴが大きく鋭い個体の方が優位になってます





クワガタ飼育に使う木の代わりに鹿の角を入れてみたら、特に問題なく(産卵は出来ない点と滑りにくい角じゃないとダメ、加熱殺菌してから投入)、さらに市販の昆虫ゼリーはプラに入ったまま投入されやすいですが、喧嘩が起きやすく、オスは顎が邪魔で吸いにくい。さらにまるで森のプラゴミ不法投棄現場みたいな感じになるので、脱プラ時代は餌場も鹿角にしました。するといい感じに。これまで鹿角を昆虫飼育の餌容器に活用した人はいないかもしれません。とりあえずいないことにします祝。