2021/02/22 02:23

2021/02/21のNHK 「ダーウィンが来た」で

キノコ特集があり、阿寒摩周国立公園できのこの研究者の方がベニテングタケをエゾシカが選択的に摂取している様子を動画撮影で
紹介されておりました。

阿寒の森は調査地なので、きのこの宝庫であることもよく知っていますが、ベニテングタケとエゾシカという関係は目からうろこならぬ目からきのこという感じで興味深いですね。番組でもきのこ観察にはきのこ目線が必要と話しておられましたが、意識しないと気付かないことも多く、シカ目線だけで歩いていてもダメで(阿寒摩周や道東でかなりの年数や日数を狩猟に費やす大ベテランハンターに試しに聞いてみたけど、きのことシカはピンと来ないそう)、調査に行った日は無くても翌日生えていたり逆もあるので、鹿ときのこの関係を意識して調べるか、きのこの調査で痕跡を見つけて、食べたのはシカということを明らかにするか・・・・。ましてきのこが地上に1本出てきて、それをシカが夜中にすぐ食べてしまえば、さらに掘り起しや食い残しなどの大した痕跡も無ければ気にも留めません。映像では、綺麗に食べているので食い残しがないため、気付きにくいと思います。私自身が、この撮影された森に数百回行ってたので、気付いていない本人です笑。きのこの研究者として行ってたら気付いていると思いますがたぶん。

阿寒できのこと鹿の関係といえば、鹿が選択的に樹皮を剥がすニレの樹をタモギと言い、ニレが樹皮食いで枯れてしまい枯れ木になると樹皮にタモギタケが生えます。ではヒグマはさておき、タモギタケをエゾシカは好むかといえば、分かりません。ですが、タモギタケは栽培品も売られているので、飼育個体に与えてみれば市販品であればすぐ分かります。個体差も有り得るでしょうけど総じて複数個体すべてが口にしない場合は野生条件下でも積極的な選択的採食の可能性は低いかもしれません。シイタケやナラタケなら食べているとかいないとか。

トナカイはきのこをよく食べます。チェルノブイリ原発事故の放射能によって、北欧やロシアのトナカイの生息地におけるきのこや地衣類汚染を介してトナカイも汚染されたりしました。

エゾシカやニホンジカもきのこは食べるでしょうけど、種類や量までは詳しくは分かりません。糞の中身を見ても分解されて見た目では分かりませんし、胃の場合は、きのこを食べた直後に捕獲された個体の胃では分かりますが、反芻や微生物による分解を経ると種類を判別できなくなったり、または採食量を過小評価してしまう場合もあるでしょう。キノコ側の事情つまり豊作不作だとか、生息地に存在するきのこの種類や季節性の偏り、シカ側の事情 個体差性差だとかも調べないと細かいことまでは分かりません。

なので、今回の自動撮影カメラ映像とこの発見は非常に貴重です。番組では、どうやら他のきのこに対しては素通りで食べようとする気配もないので、ベニテングタケを識別して選択的に採食しているのではないかということです。
とすれば、番組で触れられていたように、きのこがシカを利用して糞の排泄を通じて胞子の分散を手伝ってもらっている可能性もあるでしょう。きのこと昔からそういう関係だったことに気付いていなかっただけかもしれません。シカは森の破壊者のようなイメージが強いですが、きのこと一緒に森を育てている側面もあるかもしれません。

少し前にエゾシカの糞からきのこの新種のニュースがあり、なんでウシグソなんだというツッコミがありました笑
http://www2.chiba-muse.or.jp/www/NATURAL/contents/1520877629906/simple/Coprinopsisigarashii.pdf
なるほど、憤フン慨しませんように。
やはり森の多様性に一役買っているんでしょう

もっといろいろな動物の糞についてまとめておられます
種子分散は鳥が有名ですが、
ヒグマやツキノワグマのような果実の種子分散者や
タヌキのため糞場も
きのこになると
馬糞とマッシュルームは有名ですが
すごく参考になりますね
http://ippon.sakura.ne.jp/kaihou_ippon/no16/yoko/funseikin.htm
毒キノコが牛糞馬糞周辺に多いという気になることが書かれております
大型動物を利用して、糞の排泄を通じて胞子の分散を手伝ってもらっている可能性を示唆しているような・・・

ベニテングタケと聞いて気になるのは、やはり毒きのこということです
仮にベニテングタケからみたら、胞子の分散のためなら、たとえば誘引する臭いを発散したり、食われてもいいでしょうけど、
シカはわざわざ毒キノコにこだわる理由はあるのでしょうか?

きのこからミネラルや成分を吸収したいなら、毒キノコ以外でも良いでしょうし。
フグなら毒を取り込む防御的な理由があるので分かりますが、まさか鹿も狼に食べられないように毒を溜める!?なんてことは
ないと思います。
フグは自分の毒で何故死なない?
https://trilltrill.jp/articles/1800442?utm_source=TRILL_app&utm_medium=app&utm_campaign=page_share

ところが結構、野生のシカは、毒植物に手を出しています
例えばトリカブト
https://48986288.at.webry.info/201709/article_2.html
例えばスイセン
http://gaku-blog.net/post2105.html

私の調査地の知床の森にも代表的な毒草のバイケイソウやトリカブトが森一面に広がっている場所があります。
毒草が広がる前はササがある林床でしたので、好きなものから、もしくは食べられるものから順に食べられたということになります。
毒草も多少つまみ食いしているのでは?という痕跡は目にしますが、毒草が消えたというところまでは至っておりません。
少なくとも順序関係から見ても毒を好んでいるわけではないでしょう。濃度や量にもよります。
また、知床では毒があるイチイの樹の枝葉や樹皮食いが多いです。

毒植物と言いますが、植物は防御のために、葉や種子などに多かれ少なかれ毒を含んでおります
精油なんかはその濃縮したものですしね
野生の草食動物は常に毒を口にしなければいけない環境で生きています。

また、逆に健康のために多少の毒なら摂取したいと考えている可能性もあります。
キハダという樹種はベルベリンという胃腸薬の成分が含まれエゾシカは選択します。
もっとも鹿は胃痛にはなりにくい動物だと思いますが・・・。整腸というよりも解毒剤かもしれません。
漢方生薬では黄柏オウバクと呼ばれます。シカは黄柏の価値が良く分かっています。
アルカロイドも医薬品 イチイの毒も抗がん剤です

きのこ自体は我々の健康にも寄与してくれます
シカはきのこの毒に魅力を感じているのでしょうか?

ベニテングタケの毒
http://zazamushi.net/benitengusolt/
http://ippon.sakura.ne.jp/kaihou_ippon/ippon_kiji/no14_10.htm
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A0%E3%82%B9%E3%82%AB%E3%83%AA%E3%83%B3
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AD%E3%83%8E%E3%82%B3%E4%B8%AD%E6%AF%92
生物毒のあれこれ すごく分かりやすい
http://www.sc.fukuoka-u.ac.jp/~bc1/Biochem/venoms.htm

一部のきのこと昔から共生関係を構築しているとしても、どんな毒でもいいということにはならないでしょう
きのこの毒を意識的に取り入れようと特定種を選択しているのかは分かりませんが、様々な餌を食いつくして残った毒植物の毒と
他に十分餌があるのに仮にベニテングタケのように選択的に採食しているとするなら、シカにとっての毒の位置づけも変わると思います。
ちなみに番組の撮影場所の阿寒湖周辺のシカの生息密度は現在かなり低く、シカの過密餌不足で毒キノコを食い出したという可能性は0です。
ベニテングタケのイボテン酸はハエ殺し成分らしいですが、シカにとってはむしろ誘引 旨味と感じている可能性が考えられます。選択的採食の誘引成分。ただムスカリンやアマニチンは摂取量次第では人は死んでしまうので、シカは食べて大丈夫なのか?
ムスカリンにはアトロピンが解毒剤とありますが、これは毒をもって毒を制すということなんでしょうか?

あとは鹿がどうこうと言う前に、重要なのは鹿の第一胃の中にいる微生物が毒にさらされても大丈夫なのかどうかがまず重要でしょう。
本当に害があるならワラビ中毒のようになるはず。きのこ毒で死んでいるシカは見たことないですね。
ここで微生物が死んだり活動停止するならシカは死んでしまいます。毒で死ぬのではなく、毒で微生物が死んでその結果シカも死ぬ
ことになります。
仮に微生物が大丈夫で、毒が吸収された場合、肝臓で解毒される可能性があります。もしくは毒成分が腸などにも残りデトックスなどが必要になるかもしれません。炭をかじるとか粘土を食べるとか・・・・。

まだ細かい謎は多いですが、ルーメン微生物が解毒発酵出来るレベルなら問題ないということかなと思います
微生物が分解消化する過程で作り出す有機酸などが解毒に作用するかやそれ以外例えば微生物が毒を取り込んでしまうとか・・・
きのこも凄いのですが、微生物も凄いということでしょう

コアラの赤ちゃんがお母さんからユーカリの葉の毒を解毒出来る腸内細菌を受け取るように、エゾシカも腸内といいますか発酵胃の微生物の解毒作用が重要かもしれませんし、全ての地域個体群でベニテングタケ毒に対する同じ能力があるとは限らない可能性もあります。

小泉大先生もびっくりされたという解毒発酵 いい命名ですね
https://www.marukome.co.jp/marukome_omiso/hakkoubishoku/20190117/10432/
これまで数多の発酵食品を食べてきましたが、一番衝撃的だったのは、石川県の郷土料理で、ふぐの卵巣を秘伝の特殊な方法でぬか漬けにした物ですね。青酸カリの180倍の毒性といわれるテトロドトキシンという猛毒を持つふぐの卵巣を食べ物にしてしまうなんて、とんでもないですよね。私はこれを『解毒発酵』と呼んでいますが、奄美大島などで作られている『そてつ味噌(※)』も同例です。本当に日本の発酵文化はすごい!」
※そてつ味噌:そてつの雌花にできる種子と玄米を主原料とした、鹿児島県奄美群島や沖縄県粟国島でおもに作られている味噌。そてつには、「サイカシン」という有毒で発がん性のある成分が含まれていますが、発酵中の微生物の働きによって解毒されます。

追伸
ニホンリスでも、さらに子リスでもテングタケを食べている姿が目撃されているとのことなので、
リスやシカにとっては、生まれた後に後天的に解毒能力を獲得したとか、微生物の力とかというよりも、人間が食べた時よりも
毒の影響は軽微で、解毒能力を進化の過程で獲得していて持ち合わせていたり、影響を受けにくい体になっていたりするのかもしれません。

えっ、大丈夫?!毒キノコをむしゃむしゃ 二ホンリスとテングタケの不思議な関係 神戸大研究者が論文公開

https://news.yahoo.co.jp/articles/77f5354772cd4dd0d3b6fdd3701a9b20ff2eb394?page=1

2021/12/18まいどなニュース