2021/07/03 02:48

昨日ショッキングなニュースが飛び込んできました

道南福島町で畑に向かった女性がヒグマにバラバラにされて見つかったというものです。

近年多発している札幌南区のとうもろこしや果樹に固執したヒグマ

4月には北海道厚岸町床潭の山林で山菜採り中に襲撃され死亡

6月18日に札幌北区東区市街地に出没したヒグマ

羅臼町で飼い犬を殺したヒグマ

下記の動画にある牛を襲うヒグマ

人身事故はツキノワグマでも多いですし、秋田県でも山菜採り中に死傷事故起きてますし

ですが、ここまでバラバラにされているとこの個体はどういう経緯でここまでしたのかと思います。

クマと言えば人を怖がり、鈴をつけて声を出して走って逃げなければというのが一般論です

ヒグマは全道的に増加傾向だと思いますが、クマの習性に変化が無い場合、遭遇機会は増えても人間側の努力でリスクは減らせます。

例外は、餌付け個体、山菜採りきのこ採り登山林業など偶発的な近距離遭遇、親子グマの防衛、手負いグマ、ゴミあさり、放浪若い個体や繁殖期のオスグマ、クマに取られたものの取り返し行為などだと思います。

言い換えるとまず特にゴミの投棄や放置や餌付けをしないことです

特定場所に繰り返し出没する場合は、好物目当て特に消化のいい餌が乏しい時期の果樹やとうもろこし、果物、ハチミツ養蜂 知床にみられるサケマス遡上河川などです

これも電気柵や作付見直し、草刈で見通しを良くすることなどでも対応出来ます

一方、今の食性は草食メインですが祖先は肉食で、一度肉の味をおぼえた肉大好きヒグマが徐々に増えている可能性もあるかもしれない。

エゾシカの狩猟駆除個体が放置されたり自然死した個体交通事故死の個体を食べたヒグマが、牛を襲い出すことは不思議じゃないですし、キツネを食べた個体が飼い犬を襲うこともあるでしょう

ちなみに渡島半島の中でエゾシカ 生息密度が高いエリアはこの一帯です。

死んでいる動物を食べるところから生きている動物、牛サイズの大型動物も襲う、警戒心も低くなり、人も恐れず

こんなところで襲われるはずはないと思い込んでいるとまさかの襲撃

肉食の比率が高くなって人間を餌と思うようになったらそれは非常に危険です。

なのでバラバラにするという行為は非常に気になります。

偶然遭遇しただけでは仮に殺害されてもバラバラにされる可能性は低いのでは?

埋めたりして保存しようとしていたら尚更ですし。実際そのような痕跡あった模様。

事故現場は、人家がすぐ近くにあり畑も小さく道路も近く、裏山にはヒグマがいることは住民全員承知していても、ここで殺害されることはなかなか想像しにくい。

明らかにクマがこの町に連日出没していて警戒を呼び掛けている状況で起きたものならさておき、(多少の警戒はあったらしいがヒグマはいて当たり前のような場所なので厳戒というレベルではなかったと思います)

畑の栽培作物に誘引されてきたのか そうであるなら何を植えていたのか

仮に作物目当てなら、通常人間が近づいてきたら身を隠し、人間が去ったら食い出せばいい

人間を肉と見ていたら通常の考えは通用しない

ご冥福をお祈りするとともに、似たようなことが起きやすい状況は他の地域も同じなのでお気を付け下さい。

また、別の見方をすると、エゾシカとヒグマの生息域は重なっているので、仮に一頭の成獣ヒグマが生まれた子鹿を一頭襲うとすると、成熟クマの生息頭数分のシカの子鹿個体数抑制になりますので、オオカミは絶滅しましたがヒグマが捕食者として存在してバランスをとってくれます。

7/12に滝上町の浮島湿原に通じる林道でクマに襲われたと見られる女性の遺体が発見された。

7/16にはHTBが報道 厚岸町セタニウシ地区の町営牧場で放牧牛3頭が襲われた模様

7/23にはHBCが報道 厚岸町片無去地区で放牧中の乳牛1頭が襲われた模様

8/12にはSTVが報道 厚岸町セタニウシ地区の大別牧場で放牧牛4頭が襲われた模様

8/15にはHTBが報道 厚岸町町営牧場で放牧中の子牛1頭が襲われた模様

8/19のHTB報道 DNA鑑定で警戒心の強い大型(推定300kg)の雄クマ 同一個体が延べ55頭

標茶町と厚岸町ではおととし7月から今月15日にかけて放牧中の牛あわせて55頭がヒグマに襲われています。

 北海道が現場に残された体毛をDNA鑑定したところ、推定300キロの同一の雄グマの仕業である可能性が高いことがわかりました。

 被害は夜間に発生していて、仕掛けた箱わなに入った形跡もないことから、警戒心の強い個体が広範囲に移動し牛を襲っているとみられています。

↑ヒグマの習性通りの連鎖ですが、ハンターやワナの裏をかき捕まらず、人間の行動を見透かしたような行動をとるところが、知能的で経験値が高そう こういうクマの捕獲に当たる時は最大限の警戒が必要でしょう。

これだけずっと肉食してるともっと大きくなっているんじゃないかとも思います。大きすぎて罠に入らないということも無きにしも非ず

さらに、別の場所でも起きる可能性があります。と書くや、また起きています。

市町村 https://www.pref.hokkaido.lg.jp/ks/skn/higuma/joho.html

道警 道南マッピング https://www.police.pref.hokkaido.lg.jp/00ps/hakodatehonbu/bear0810.pdf

ちなみに8月12日現在も、福島町における加害個体の捕獲情報は入っておりません。

殺害現場に固執する個体であれば既に駆除されていると思いますが、実際はそうではないので、行動圏の狭いメスではなく繁殖期の放浪オスだったりすると福島町内にはおらず別の離れた場所にいる可能性もあります。周辺市町村で捕獲された場合も、遺伝子の照合が行われると思いますが、この先長期間行方不明なままだと、厄介な存在です。

8/7 毎日新聞 津別町最上地区 畑草刈作業中の女性親子が巨大ヒグマに襲撃される

https://mainichi.jp/articles/20210807/k00/00m/040/152000c
津別町の畑は調査で少なくとも100回は歩き回ったことがありますが、隣接する美幌も津別も畑脇で駆除捕獲されることが稀にある地域です。多くはトウモロコシなどの被害のみですが、ここでも人身事故。農作物被害で終わらず、人身事故に至る理由は何でしょうね。

ヒグマの食性変化に関するもの

知床のヒグマはサケを意外に食べない
https://www.huffingtonpost.jp/science-portal/shiretoko-brownbear_b_5795394.html
サケが嫌いなわけでは無く、開発や遡上量の変化や他個体との競合など
海水温上昇でサケの遡上が遅れて痩せたヒグマが目撃されるようになりましたね

北海道のヒグマが草食化 シカを食べなくなった理由とは?
https://www.huffingtonpost.jp/2015/04/05/hokkaido-brown-bear_n_7008526.html
https://www.nature.com/articles/srep09203.pdf
このブログで書いていることと真逆ですが、100年以上前との比較です

「研究グループは、道東と道南のヒグマの骨を博物館などから提供してもらい、よく食べる動植物によって骨に含まれる比率が変わる炭素や窒素などを分析。骨の年代を「本格的な開発前」、「開発初期」(1931~42年)、「現代」(1996年以降)の3期に分けて、ヒグマが食べた物を調べた。

その結果、道東のヒグマは本格的な開発前(1920年以前)は、シカや昆虫などの陸上動物が64%、サケが19%を占めたが、現代はどちらも8%に減少。道南も開発前(1890年以前)は陸上動物が56%だったが、現代は5%に低下していた。」

下記の鹿の記述は違うと思います↓

「サケ漁や土地開発が本格化したことが影響したと考えられる。また、ヒグマは単独では(大型で敏しょうな)シカの成獣を捕獲することが難しく、かつてはオオカミが仕留めたシカを横取りしていたとみられ、エゾオオカミの絶滅が関係した可能性もある」


オオカミが絶滅する前に、乱獲と2度の大雪で1890年頃には既にエゾシカは絶滅寸前レベルまで減少しているので、オオカミの存在の有無に限らず、エゾシカの生息数が少なすぎて、まして道南はほぼいない状態だと思われ、上記のような結果になったと思います。あとは、雪で死んだ鹿も得られるわけでオオカミがいるかいないかはあまり関係ないと思います。


ところが、その後エゾシカの生息数は回復し、この論文の現代1996年以降は道東ではエゾシカはかなりの生息数高密度になっていた。道南は1996年頃はまだ低密度。

道東では、ハンターの残滓放置や大雪で餓死した鹿の死体、交通事故死体などは得やすい状態だった。


エゾシカ生息数が多い状態になっても、ヒグマは草食主体の食性を続けるのか(消化能力は草食向きではないので草食と言っても作物 果実 木の実が主体)

それとも死体が得やすい秋から春までの期間は冬眠前冬眠明け後に好んで鹿を食うのか(冬眠しないヒグマや死んだシカを食べるヒグマは目撃されている)

初夏から初秋に出産後の子ジカや生きている成獣個体も襲って食べるのか 成獣のヒグマが生きている成獣のオスジカを捕獲することは可能ですので、子ジカは容易です。(襲っている姿は目撃されている 狩りが上手下手の個体差はあると思いますが)

個体差=肉食化に目覚めた個体とそうではない個体の差異がどの程度あるか 特定個体だけなのか全体的な変化なのか(最初は特定の個体が肉を美味いと感じ、また肉を得ようとすると思いますが、母親が子育て中にそういう食性だとその子の食性にも影響を与え始めると思いますので次第に拡大することは考えられる)

分析に用いる個体標本の捕獲時期によっても比率が変わるでしょうけどその個体の平均的な食性は反映されていると思います 

まあ糞や胃の内容物でも鹿の捕食の有無くらいは分かりますけどね(あくまで捕獲直前の食性情報ですが)


予想した通りのニュースが次々に入ります

8/14 HBC

上砂川奥沢キャンプ場



ヒグマの生息密度も1996年と2021年では違う 過密と餌の競合

道南 道央 道北でもエゾシカの生息数が増えている

交通事故も多い

積雪による自然死は、年や地域によってばらつきが大きい

春から秋までの有害駆除の手負い状態にされ死んだエゾシカも得やすい可能性 基本的には捕獲個体は回収義務

トウモロコシ畑の有無 サケの遡上の量や有無(物理的障害など含む)との関係


といった現代のさらに近況まではこの論文に反映されておりませんが、肉食から草食へ 草食から肉食回帰へが起きても不思議ではない状況にはあると思います。オオカミがいなくてもです。


仮に肉食化回帰になると家畜被害や人身事故は増えるのか?家畜被害は増えると思いますが、人身事故は人側の意識や対策にも左右されるのと狩猟圧の程度にも左右される可能性がある。意識のレベルでいうと、ヒグマは人を恐れる、音を出していればクマから先に遠ざかる、こんな場所でクマに遭遇することはないというような思い込みや一般論が通用しない場合が増えた時が危険な状態かと思います。



ヒグマが連日とうもろこし🌽を食べに来て、数年前に射殺された場所で、またとうもろこし🌽を植えている。

無防備ですね


狩猟期 冬眠前のニュース

鹿猟のハンター襲われる

狩猟期にエゾシカが撃たれるような場所はヒグマも冬眠前の最後の食い溜めで集まります

手負いになって死んだシカ 違反ですが残滓放置個体などにヒグマが執着しているところに別のハンターが近づけば、このようなことは当然起き得るものです。場合によっては冬眠開始が遅れることもあります。

HBC  2021.11.26

山中で発見された男性変死体 死因は外傷性ショック 鼻骨折れ、頭部に深い傷 クマが襲ったか 夕張市

遺体は、男性の車が止まっていた林道の脇の斜面の20メートルほど下で見つかり、近くに猟銃があったということです。

 司法解剖の結果、男性の死因は頭の出血や、鼻の骨が折れたことなどによる外傷性ショックでした。

 男性は、強い力で襲われたとみられ、遺体の頭には、えぐられたような深い傷や、食べられた跡がありました。

https://news.yahoo.co.jp/articles/8e42554649cbe0adc23f9737a44f95053bd2069d


NHK 2022.06.09.

国有林に100頭超のエゾシカの皮や骨 解体後に投棄か

北海道森林管理局によりますと、先月16日、厚岸町の別寒辺牛川流域の国有林にエゾシカの皮や骨が放置されているのを調査を行っていた作業員が見つけました。
その後、森林管理局などが調べたところ、現場周辺であわせて100頭を超えるエゾシカの死骸の一部が見つかったということです。

https://www3.nhk.or.jp/sapporo-news/20220609/7000047366.html?fbclid=IwAR0DVjVtJGUkNbs97Y5pqT6GAfLNLScl0pK-yfb6-lM_h_2XEz8-M42LWeI

こういう不法投棄は、ヒグマの肉食化を助長したり、偶然現場で遭遇した人が襲撃されたりという危険性があります

厚岸町というのがこれまでの経緯と重なります。実際はどうかはさておき。